最近、SNS等で「Mac mini」を購入したと報告している人をよく見るようになったと思いませんか?
急に「Mac mini」が人気になったのは、「AIエージェント」を24時間動かすために、ちょうど良いデバイスだからって感じなんですよ。
海外などでは売り切れが続出しているとか・・・
生成AI界隈でまた大きな変化を迎えている感じがあります。
そのため、
「AIエージェントの波に乗り遅れるな」
「今すぐ導入しない企業は、3年後に市場から消え去る」
最近、メディアやコンサルタントがこぞってこのような言葉を投げかけてきます。
経営者や管理職の皆様は、焦燥感に駆られているのではないでしょうか。
「競合他社はすでにAIで人員削減を進めているのではないか」
「うちも早く何か手を打たなければ手遅れになる」と。
しかし、AIエージェントは今の時点でいろいろな問題もありますので、急いで導入すると大変なことになってしまうリスクもはらんでいます。
今回はAIエージェントについて考えてみましょう。
そもそもAIエージェントとは何か? 「生成AI」との決定的な違い
AIエージェントという言葉を耳にする機会が増えましたが、「結局、ChatGPTと何が違うの?」という疑問をお持ちの方は少なくありません。
ここをまず整理しましょう。
生成AIは「聞かれたら答える」AI
ChatGPTやGeminiといった生成AIは、私たちがプロンプト(指示)を入力して初めて動き出します。
「この文章を要約して」と言えば要約し、「企画案を出して」と言えば企画案を出してくれます。
しかし、あくまで「1回の指示に1回の回答」が基本です。
次に何をすべきかは、人間が判断しなければなりません。
いわば生成AIは、非常に優秀な「回答マシン」です。
聞けば答えてくれるけれど、自分から動くことはありません。
AIエージェントは「目標を渡せば自分で動く」AI
一方、AIエージェントは「目標」を伝えるだけで、そこに至るプロセスを自律的に考え、必要なツールを使い分けながら、タスクを完了まで持っていくAIです。
たとえば、「来月の営業会議用にQ3の売上レポートを作成して」と指示した場合を考えてみましょう。
生成AIの場合は、「レポートの雛形を作って」「この数字を入れて」「グラフにして」と、一つひとつ人間が指示を出す必要があります。
AIエージェントの場合は、社内のファイルから売上データを読み取り、必要な分析を行い、グラフを生成し、フォーマットを整えてレポートを完成させるところまで、自動で進めてくれます。
つまり、生成AIが「作るAI」だとすれば、AIエージェントは「働くAI」です。
生成AIはクリエイティブな「脳」であり、AIエージェントはその脳に「手足」がついたもの、と考えるとわかりやすいでしょう。
ポイントは「自律性」と「ツール連携」
AIエージェントが従来のAIと根本的に異なる点は、2つあります。
自律性
まずは自律性です。
与えられた目標に対して、自らタスクを分解し、優先順位をつけ、実行順序を計画します。
途中でエラーが発生しても、自己修正しながら目標達成を目指します。
ツール連携
次はツール連携です。
Web検索やファイル操作、外部APIとの接続など、複数のツールを状況に応じて使い分けます。
Anthropicが提唱するMCP(Model Context Protocol)という共通規格が普及し始めており、AIエージェントと外部サービスの接続はより容易になりつつあります。
この2つの特徴があるからこそ、AIエージェントは「業務プロセスそのもの」を代行できる存在として注目を集めているのです。
AIエージェント元年?いま何が起きているのか?
2025年は、業界では「AIエージェント元年」と呼ばれました。
Google、Microsoft、OpenAI、Anthropic、Salesforceといった主要テック企業が相次いでAIエージェント関連の製品・サービスを発表し、市場は一気に加熱しました。
企業向けAIエージェントが本格化
日経新聞が報じたように、2026年は「AIエージェントが日本企業の利益に本格貢献する年」と位置づけられています(出典:日本経済新聞, 2025年12月)。
金融・製造・行政など、幅広い分野でカスタマーサポートや営業支援、企画業務にAIエージェントが浸透し始めています。
理由はシンプルです。
「人手不足」と「分業の限界」に、生成AIの次の答えとしてエージェントが刺さるから。
実際、企業側はエージェントを増やす方向で動いています。
法制度も動き始めた
2025年6月には「AI新法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)」が公布されました。
これは日本初のAI包括法であり、AI戦略本部の設置や基本計画の策定が進められています。
重大事案時には社名公表を含む強い措置も想定されており、企業にとっては「使わないリスク」だけでなく「使い方を間違えるリスク」にも備える必要が出てきました。
中小企業経営者が知っておくべき最新ツール
ここからは、AIエージェントの最前線で何が起きているのか、具体的なツールを通じてお伝えします。
「自社でも使えるのか」という判断材料にしていただければ幸いです。
これら主要AIエージェントの登場が示すのは、「AIエージェント市場は群雄割拠の戦国時代に突入した」という事実です。
どのツールが最終的に生き残るかは誰にもわかりません。
だからこそ、中小企業の経営者は特定のツールに過度に依存するのではなく、自社の業務課題に照らして冷静に判断する視点が重要でしょうね。
Claude Cowork:プログラミング不要のAI秘書
2026年1月にAnthropic社がリリースした「Claude Cowork」は、非エンジニアでも使えるAIエージェント機能です。
もともと同社はプログラマー向けの「Claude Code」を提供していました。
ところが、実際にはプログラミング以外のファイル整理や資料作成にも応用する人が続出。
この現象に着目して、技術知識がなくても使えるよう再設計されたのがClaude Coworkです。
Claude Coworkの最大の特徴は、パソコン上の指定フォルダに直接アクセスし、ファイルの読み取り・編集・作成を自動で行ってくれること。
従来のAIチャットのように「ファイルをアップロードして、結果をダウンロードして」という手間がなくなります。
具体的にできることとしては、散らかったフォルダを自動で種類別・日付別に整理する、経費のレシート写真からExcelの経費レポートを自動生成する、過去の議事録を読み込んで次回会議のアジェンダを作成するといった作業が挙げられます。
Anthropic社自身がこの変化を表現する言葉が印象的です。
公式発表では「質問と回答のやりとりというより、同僚にメッセージを残す感覚に近い」と述べています。
ただし、現時点では、有料プラン(月額約3,400円のProプランまたは月額100ドル以上のMaxプラン)が必要です。
また、「リサーチプレビュー」段階であり、安定性や機能面にはまだ改善の余地があります。

Claude Code Agent Teams:AIチームを編成して並列作業
Claude Coworkから約1ヶ月後の2026年2月には、さらに革新的な機能「Agent Teams」がリリースされました。
これは、複数のAIエージェントが「チーム」を組んで、並列で作業を進める仕組みです。
マルチAIエージェントとも言われます。
1つのAIに順番にタスクを頼むのではなく、バックエンド担当・フロントエンド担当・テスト担当・ドキュメント担当とそれぞれ別のAIエージェントが同時に作業し、互いに進捗を確認しながら完成させていきます。
驚くべきは、Anthropicのエンジニアがこの機能を使って16体のAIエージェントを同時稼働させ、約10万行のCコンパイラを構築した事例です。
約2,000セッション、約20,000ドルのAPIコストで完成したといいます(出典:Anthropicエンジニアリングブログ, 2026年2月)。
ただしこの機能は現時点で「リサーチプレビュー」段階であり、利用にはMaxプラン(月額100ドル以上)またはAPI従量課金が前提です。
チームメンバーの数に比例してトークン(AIの処理単位)消費が増えるため、コスト管理は欠かせません。
これはうまく使いこなせれば一人会社でもかなりのことができそうな予感がありますけどね。
OpenClaw(旧Clawdbot):スマホから遠隔操作も
昨今、AI界隈で大きな話題となっているのが「OpenClaw(オープンクロー)」です。
GitHubでわずか3日間で6万スターを超え、2026年2月時点で14万5,000スターを突破するという、史上最速クラスの成長を見せました。
最大の特徴は、WhatsApp、Discord、LINEなどのメッセージアプリから、自宅や会社のPCを遠隔操作できることです。
たとえば、外出先からスマートフォンのLINEで「今日のスケジュールを確認して、空き時間に会議を入れて」と送ると、AIが自宅のPCを操作してタスクを完了し、結果を報告してくれます。
メール管理、カレンダー調整、ファイル整理、Web情報の収集など、50以上のサービスと連携可能です。
ソフトウェア自体は無料で、利用者はAIモデルのAPI料金だけを負担する仕組みです。
Claude、ChatGPT、Geminiなど好みのAIモデルを選べる「モデル非依存」の設計も魅力の一つです。
Manus:完全自律型AIエージェント
「AIエージェント」という言葉を世界的に広めた立役者が、中国発のスタートアップButterfly Effect社が開発した「Manus(マヌス)」です。
2025年3月にリリースされ、わずか8か月で年間売上高1億ドルを達成。
2025年12月には、Meta(旧Facebook)が20億ドル超で買収したことが報じられ、AIエージェント市場の象徴的な存在となりました。
Manusの名称はラテン語の「手」に由来し、「知識を行動に変える」という理念を体現しています。
従来のChatGPTやClaudeが「質問に答える」対話型AIであるのに対し、Manusは「指示を受けて、自ら計画し、実行し、成果物を納品する」完全自律型のAIエージェントです。
内部では「プランナー(計画)」「エグゼキューター(実行)」「バリデーター(品質管理)」という3種類の専門エージェントがチームとして連携し、タスクの性質に応じてClaude、GPT、Geminiなど最適なAIモデルを自動選択する仕組みを採用しています。
たとえば「競合企業を10社調べてレポートにまとめて」と指示すると、Manusが自動で検索、情報整理、レポート作成までを完了し、成果物として納品してくれます。
2026年1月時点の最新バージョン「Manus 1.6」では、モバイルアプリ開発や画像編集、複数エージェントによる並列調査(Wide Research)、さらには定期タスクの自動実行まで可能になっています。
一方で注意点も明確です。
複雑なタスクではハルシネーション(誤情報の生成)が含まれることがあり、自動的にWeb操作やツール操作を行うため、機密情報の取り扱いには慎重な判断が求められます。
また、クレジット制の料金体系のため、複雑なタスクほどコスト消費が大きくなる傾向があります。
中小企業の現場での活用を考える場合、「競合調査レポートの自動作成」「市場分析の効率化」など、定型的なリサーチ業務から段階的に試すのが現実的でしょう。
Genspark:一気通貫で行うAIワークスペース
もう一つ注目すべきAIエージェントが、米国シリコンバレーのMainFunc社が開発した「Genspark(ジェンスパーク)」です。
2025年11月にはシリーズB資金調達で2.75億ドル(約410億円)を完了し、企業評価額は12.5億ドル(約1,875億円)に到達。
AIエージェント企業として最速でユニコーンとなりました。
Gensparkの最大の特徴は、ChatGPT、Claude、Geminiなど9つ以上の大規模言語モデルを1つのプラットフォームに統合した「Mixture-of-Agents(MoA)」アーキテクチャです。
タスクの内容に応じて最適なAIモデルが自動選択され、複数モデルが相互に回答を検証するため、単一モデルよりもハルシネーションが少ないとされています。
中小企業の経営者にとって特に注目すべきは、その「オールインワン」の設計思想です。
AI検索、リサーチ、ファクトチェック、スライド作成、データ分析、動画生成、さらには電話による予約代行まで、すべてを1つのワークスペースで完結できます。
たとえば「CES 2026の情報を分析して10ページのスライドにまとめて」と指示するだけで、情報収集からデータ整理、画像選定、スライド構成までを自動で実行してくれます。
これは、ChatGPT Plus+Gemini Advanced+Claude Proを個別に契約するよりもコスト効率が高い場合があります。
料金プランには無料枠も用意されており、有料プランも月額約3,750円からと、他の主要AIツールを複数契約するよりも割安です。
ただし、高度なタスクほどクレジット消費が増える点は、Manusと同様に注意が必要です。
「AIエージェントブームに乗り遅れた?」への冷静な答え
さて、ここからが本記事の核心です。
「うちもすぐにAIエージェントを導入しなければ」と焦る経営者の方もちょっと冷静になる必要があります。
ガートナーの衝撃予測:「40%以上が中止される」
世界的なIT調査会社ガートナーは、2025年6月に注目すべき予測を発表しました。
「2027年末までにエージェント型AIプロジェクトの40%以上が、コストの高騰、ビジネス価値の不明確さ、不十分なリスクコントロールを理由に中止される」というものです(出典:ガートナージャパン プレスリリース, 2025年6月)。
同社のアナリストは、現在進行中のプロジェクトの多くは「初期段階の実験や概念実証(POC)であり、ハイプ(過熱状態)に後押しされ、誤用されるケースが大部分」と指摘しています。
さらに衝撃的なのは、数千社あるAIエージェントベンダーのうち、真のエージェント型AIを提供しているのはわずか130社程度に過ぎないという推定です。
残りの多くは「AIエージェント・ウォッシング」、つまり既存のチャットボットやRPAを「AIエージェント」としてリブランディングしているに過ぎないとされています。
「インターネット黎明期」と同じ構図
この構図は、1990年代後半のインターネットバブルを想起させます。
当時も「ホームページを持たない企業は淘汰される」と煽られ、多くの企業が中身のないWebサイトに投資し、バブル崩壊で手痛い損失を被りました。
しかし、インターネットそのものが無価値だったわけではありません。
バブルの後に、Amazon、Google、楽天といった本物のビジネスモデルが花開きました。
重要なのは「技術のタイミング」ではなく「自社にとっての必然性」で判断することだったのです。
ガートナージャパンの亦賀忠明氏も、次のように述べています。
「現在はインターネットの初期と同じであるため、ビジョンや幻想が先行しながら進化の途上にあるテクノロジが世の中にあふれかえる状況になります。過剰な期待も過小評価も禁物です」(出典:ガートナージャパン, 2025年6月)。
中小企業が直面する「3つの現実」
AIエージェントの導入を検討する際、中小企業は以下の3つの現実を直視する必要があります。
コストの問題
まず挙げられるのがコストの問題です。
例えばClaude Coworkを日常的に業務で使うためには、通常のチャットの数倍のトークンを消費するため、Proプラン(月額約3,400円)では制限にすぐ達してしまうのが実情です。
少なくとも月額100ドル(約15,000円)のMaxプランが推奨されています。
バリバリ使おうとすればそれでも全然足りません。
Agent Teamsに至っては、チームメンバーの数だけコストが倍増します。
中小企業にとって、「効果が見えない段階での月額数万円の固定費」は決して軽い負担ではありません。
AIエージェントにやらせたいこととコストの問題のバランスを考える必要が今の時点ではありますね。
安全性のリスク
最大のリスクがこちらでしょう。
AIエージェントに仕事をさせるためには、社内のファイルサーバーやメールシステム、データベース、ブラウザへの「アクセス権限」を与える必要があります。
もし、悪意のある外部からの攻撃(プロンプトインジェクション等)を受けたり、AI自身が誤った論理(ハルシネーション)で暴走したりした場合、どうなるでしょうか。
「経費のExcelをまとめて」と指示したつもりが、AIが自律的に判断を誤り、顧客の個人情報が詰まったデータベースを外部のWebサービスに送信してしまう。
自動返信機能を持たせたAIエージェントが、取引先に対して事実無根の暴言や誤った見積もり金額をメールで大量送信してしまう。
これは決してSF映画の話ではありません。
AIエージェントの脅威の73%は「外からは見えない内部プロセス(メモリの汚染や権限の動的継承)」に起因するとされています。
中小企業にとって、顧客情報の漏洩や取引先への甚大な迷惑行為は、一発で「倒産」に直結しかねない話です。
「AIが勝手にやったことです」という言い訳は、法廷でも取引先に対しても通用しません。
すべての責任は、権限を委譲した経営者に帰属します。
ある意味、他人に家の鍵を渡して出かけるみたいなもんなんですよ。
使用用途の問題
また、使用用途の問題もあります。
例えばAIエージェントの話題でよく出てくるのが、「ファイルの整理」「出張先の手配」「文字起こし」などです。
たしかにそれはそれでとても便利ですが、通常の生成AIと比較して高いコスト、安全性のリスクを背負ってやるべきかという問題もあります。
少し人間の手間暇は掛かりますが、通常の生成AIでもある程度はできる部分なんですよ。
プログラミングなどの作業をやらせるならコスパは合うでしょうけどね。
なにに使うのか、それは本当にAIエージェントにリスクを負ってまでやらせるものなのかをよく考える必要はありそうです。
中小企業診断士として考えるAIエージェントとの付き合い方
では、中小企業は何もしなくてよいのでしょうか。
答えはNOです。
しかし、焦って大きな投資をすべきでもありません。
ここでは、現実的なアプローチをお伝えします。
まず「生成AI」を使い倒す(今日からできること)
AIエージェントの土台は生成AIです。
ChatGPTやGeminiといった生成AIを業務で活用できていない段階で、AIエージェントに手を出すのは、基礎体力がないままフルマラソンに挑むようなものです。
ガートナーのアナリストも指摘するように、日本企業はRAG(検索拡張生成)の段階ですでに精度の問題で苦戦しています。
この状況でエージェントに飛びついても、安定した成果は望めません。
まずは、社内でメール文案の作成、議事録の要約、企画書のアイデア出しなど、低リスクな業務から生成AIの活用を始めてください。
この段階で重要なのは、社内ルールの策定です。
「どのツールを使うか」「何を入力してはいけないか」「出力は人間が必ず確認する」といった基本方針を明文化しましょう。
「AIエージェント的な使い方」を限定領域で試す
生成AIの活用に組織が慣れてきたら、次のステップとして、AIエージェント的な使い方を限定的に試みます。
たとえば、請求書処理や経費精算のような「件数が多くパターンが安定している定型業務」から始めるのが安全です。
処理時間・差戻し率・夜間作業比率などの指標を設定し、3〜6週間の検証で効果とリスクを数値で確認しながら、導入可否を判断します。
Claude Coworkのような「フォルダ内のファイル整理」「レシートからの経費レポート作成」などは、この段階で試してみる価値があるでしょう。
AIエージェントは「魔法のシステム」ではなく「自律性を持った新入社員」というイメージを持つと良いでしょう。
ルールも整備されていない現場に、いきなり何十人もの言うことを聞かない新入社員を放り込めば、現場はパニックになり、教育コストばかりが膨らみます。
まずは「使用用途の限定」と「特定部門での局地戦」から始めるべきです。
また、機密性の高い文書へのアクセスは避け、バックアップを必ず取ってから試すことが鉄則です。
「Human in the Loop」を徹底
効果が確認できたら、初めて本格的な導入を検討します。
ただし、AIエージェントに「1から10まで全てやらせる」という発想を捨てるとよいでしょう。
私たちが目指すべきは、AIが8割の面倒な作業をこなし、最後の重要な判断(送信ボタンを押す、契約書に判を押す)を必ず人間が行うという設計です。
これを専門用語で「Human in the Loop(人間の介在)」と呼びます。
前述したClaude Coworkの優れた点は、重要な操作(フォームの送信やファイルの保存など)の前に、必ずユーザーに確認を求めてくる点にあります。
この「確認ステップ」を業務フローに厳格に組み込むことで、AIの暴走による致命傷を防ぐことができます。
物理的に切り離すのも手:Mac miniが爆発的人気の理由
冒頭で「Mac mini」が人気になっていると書きましたが、リスクを考えてPCごと通常業務とAIエージェントを物理的に切り離しているという部分もあるんですよ。
また、「Mac mini」の性能があればローカル(自社内)でOpenClawを動かすことができるというのも魅力。
テスラ元AI責任者のAndrej Karpathy氏がOpenClawを公に称賛したことも火付け役となり、多くの開発者が「599ドルのMac mini+OpenClaw=自分専用のJarvis(アイアンマンのAI秘書)」という構成に飛びついたようです。
数あるPCの中で「Mac mini」が選ばれるのは、性能・コストパフォーマンス・常時稼働時の電気代という部分が大きいですね。
経営者自身が関わる
これが最も重要です。
「ITのことはよくわからないから、システム担当者や若手に任せるよ」というのではなく、ある程度経営者自身が関わりましょう。
例えば前述したClaude Coworkは、プログラミングができなくても自然言語で指示を出せるツールです。
つまり、経営者自身が直接AIに指示を出し、その動きを確認できる時代になったのです。
まずは経営者や管理職の皆様自身が、自分の手元にある「競合調査」や「社内資料の整理」といった業務をAIエージェントに任せてみてください。
- どのくらい早く終わるのか。
- どこでAIはつまずくのか。
- どのような指示(プロンプト)を出せば正確に動くのか。
この「手触り感」を経営陣が持っていない限り、現場への適切な指示も、リスク管理のためのルール策定も絶対にできません。
「AIをマネジメントする能力」は、これからの経営者にとって、財務諸表を読む能力と同じくらい必須のスキルになると考えられます。
「待つべき理由」と「今やるべきこと」を見極める
最後に、重要なことをお伝えします。
AIエージェントブームの本質は、「乗り遅れるかどうか」ではありません。
「自社の経営課題に対して、今の技術成熟度で投資する合理性があるかどうか」です。
ガートナーは、2028年までに日々の仕事における意思決定の少なくとも15%がエージェント型AIによって自律的に行われ、エンタープライズアプリケーションの33%にエージェント型AIが組み込まれると予測しています。
この数字は、2024年時点のほぼ0%から比べると驚異的な成長です。
つまり、中長期的にAIエージェントが企業経営に大きな影響を与えることは確実です。
しかしそれは、「今すぐ大きな投資をしなければ手遅れになる」ということとは違います。
大切なのは、今のうちから「AIと共に働く組織文化」を育てておくことです。
生成AIの活用、社内ルールの整備、小さな成功体験の蓄積。
これこそが、AIエージェントが実用段階に入ったとき、スムーズに導入できる組織となるのです。
インターネットの初期に、いちはやくホームページを作った企業がすべて成功したわけではありません。
しかし、インターネットを理解し、自社のビジネスモデルにどう活かすかを真剣に考え続けた企業は、確実に競争優位を築きました。
AIエージェントの時代も同じです。
まとめ
AIの進化スピードは速いですが、だからこそ「焦り」は最大の敵です。
中小企業の強みは、経営者の判断で素早く方向転換できる機動力にあります。
大企業が数千万円の投資判断に何ヶ月も費やしている間に、小さく試して、小さく学んで、確実に前に進む。
それが、中小企業がAI時代で勝ち残る最善の戦略だと、私は確信しています。
皆様の会社が、AIエージェントという強力な「右腕」を正しく飼い慣らし、次なる成長への確かな一歩を踏み出せることを願っています。

