ChatGPTやNotebookLM、Geminiなど、生成AIの導入が企業で加速しています。
議事録作成や報告書の下書き、FAQ対応、コード補助など、業務効率化の効果は絶大です。
一方で、多くの企業経営者や情報管理担当者が懸念しているのが、「情報漏洩」のリスクです。
特に懸念されているのは以下のような点です。
・社員がAIに機密情報や個人情報をそのまま入力してしまう
・入力した内容が学習に使われて将来的に漏れる
・無料のAIツールを勝手に使っている社員がいる
本記事では、こうしたリスクに対応するための「社内AI利用ルール(ガイドライン)の策定方法」を中心に、ChatGPTなどの生成AIを安全に使うための設定や考え方をわかりやすく解説します。
なぜ生成AIで「情報漏洩リスク」があるのか?
まずは前提となる生成AIの利用による情報漏えいリスクについて見ておきましょう。
機密情報が漏れる仕組み
多くの生成AIはクラウド上で動いています。
つまり、ユーザーがAIに入力したテキストやファイルは、一時的に外部サーバーへ送信されるという仕組みです。
このとき、何の対策もせずに個人情報や社内機密を入力してしまうと、
といったリスクが発生します。
多くの場合は問題になりません。
しかし、社内の機密情報が生成AIを活用した他社の画面に表示される可能性があるのです。
生成AIの導入にルールが必要な理由
例えば以下のようなやりとりを行ったとします。
「この取引先との契約書、内容を要約して」
「この試作品の仕様を確認して」
「A社の○○プロジェクトのスケジュールを整えて」
「○○さん(顧客)の相談内容から返信文を作って」
「この事業計画から補助金申請書類作って」
このような入力が、知らずに外部のAIサーバーに渡り、蓄積・学習される可能性があるとしたらどうでしょうか?
一人の社員の「ちょっと便利だから」が、企業にとって重大な情報漏洩リスクを招く恐れがあります。
このため、「生成AIは便利だけど、使い方を誤ればリスクにもなる」という認識を、組織全体で共有しなければなりません。
ChatGPTで「学習させない」ための設定と注意点
実はそんな懸念を少しでも減らす設定があります。
無料版・個人Plus、Pro版の場合
個人向けの初期設定では、入力内容がAIの学習に使われる可能性があります。
これを防ぐためには、手動で設定をオフにする必要があります。
▼ 設定手順(Web版):
画面左下の自分の名前をクリック
・「設定」を選ぶ
・「データコントロール」を開く
・「すべての人のためにモデルを改善する」をOFFにする
また、チャット履歴を参照されたくない場合は
画面左下の自分の名前をクリック
・「設定」を選ぶ
・「パーソナライズ」を開く
・「チャット履歴を参照する」をOFFにする
これにより、チャット履歴は参照されず、モデル学習にも使用されません。
※設定項目、場所はバージョン等で変わる可能性があります。
✅ただし、この設定をしても通信自体はOpenAIのクラウドを経由するため、完全に社外に出さないわけではありません。
重要情報の入力は避けましょう。
ChatGPT Team / Enterpriseを使う場合(法人向け)
OpenAIは企業向けに「ChatGPT Team」や「Enterprise」プランを提供しています。
これらは初めから学習には使われず、セキュリティ面でも高水準です。
・入力内容はモデル訓練に一切使われない(契約上明記)
・データは暗号化され、利用企業のみに限定
・利用状況を管理者が一元的に可視化・制御可能
つまり、情報漏洩対策としては、企業利用ならTeamまたはEnterpriseプランの導入がベストってことですね。
代替としてNotebookLM(Google)を使う
もう一つ考えられるのがNotebookLM(Google)を代替えとして使う方法です。
NotebookLM(Google)は自分でアップロードしたドキュメントを元にAIと対話ができるという仕組みです。
自分がアップロードしたものに対しての返答ですし、アップロードされた文書ややりとりはモデルの訓練には使われないと公式のヘルプに明記されています(2024年現在)。
つまり、自分のデータが他人のAI応答に影響を与えることはないという点で安心です。
ただし、以下の点には注意が必要です:
- Googleアカウント上の利用なので、社外クラウドにデータは保存される
- 管理者によるアクセス制限・履歴制御がしにくい
- 社内機密のドキュメントをアップロードするには慎重さが必要
社内でのAI利用ルールを明確にする(ガイドライン策定)
企業が生成AIを導入する際に最も重要なのが「ガイドライン(利用ルール)」の整備です。
どれほど安全なツールを導入しても、社員の使い方がルールに則っていなければ意味がありません。
ここでは、具体的にどのような内容を含めるべきか、段階的に詳しく解説します。
【ステップ1】AI利用の「目的」と「リスク」の社内共有
最初に重要なのは、社員に対して「なぜAIを使うのか」「何を気をつけるべきか」を正しく伝えることです。
- AI導入の目的 → 業務効率化、生産性向上、競争力強化
- リスク → 情報漏洩、誤情報の利用、責任所在の曖昧化
社内説明会やイントラの案内文などで、「AIは便利なツールだが万能ではない」ことを繰り返し伝えるのが効果的です。
【ステップ2】ガイドラインに入れるべき必須項目
実際の社内ガイドラインに盛り込むべき内容は以下のようなものです。
▼ 入力禁止情報(絶対に入力してはいけない)
- 個人情報(氏名、電話番号、住所、メールアドレスなど)
- 社内機密(未発表の製品情報、顧客リスト、契約条件など)
- 他社との秘密保持契約(NDA)に該当する情報
- 社員情報(評価、給与、勤怠情報など)
「自分が外部に言ってはいけない内容」は、AIにも言ってはいけない、と教育します。
▼ 利用可能なAIツールの指定
- 利用を許可するAIツールを明示的に指定
例:ChatGPT Team、Microsoft Copilot、NotebookLM(限定用途) - 無料ツールや個人アカウントでの使用は禁止
▼ 出力の確認義務
- AIからの出力内容は必ず人間が確認・編集してから利用
- そのまま転送・公開することは禁止
- 法的・契約的に使用が制限される場面では利用禁止
▼ ファイルアップロード時の注意
- 社内ファイルをAIにアップロードする際は、
→ 機密度を確認する
→ ドキュメント名に個人名や顧客名を含まないようにする
【ステップ3】運用・研修・監査体制の整備
ガイドラインは作っただけでは不十分です。
「ルールを守らせる仕組み」まで設計しなければ、形骸化してしまいます。
▼ 定期研修の実施
- AI活用のメリットと注意点を理解してもらう研修を年1回以上実施
- 部署ごとに具体的な業務例に即して説明する
▼ ログ管理・監査機能の活用
- ChatGPT Teamなどでは、利用ログを管理者が確認可能
- 社内でのAI使用状況を把握する体制を構築する
▼ 社内窓口の設置
- 「この内容は入力しても大丈夫か?」を確認できる相談窓口やQ&Aチャットを設けることで、ルール遵守率が上がります
社内でのAI導入ルール(モデル例)
以下は、実際のガイドラインでよく使われる記述例です。
【AI利用ガイドライン(抜粋)】
- 利用目的
業務の効率化と情報整理の支援のために生成AIを活用する。 - 禁止事項
以下の情報は、生成AIに入力してはならない:
・個人情報、顧客情報
・社外秘情報
・契約条件、価格情報など - 許可されたAIツール
ChatGPT Team、Microsoft Copilot、NotebookLM(社内指定用途のみ) - 責任の所在
AI出力の内容を業務に使う場合は、最終責任はユーザーが負うものとする。 - 教育・管理体制
AI利用に関する社内研修は年1回実施する。
ガイドラインは状況に応じて更新され、イントラネット上で随時共有する。
AI導入を阻むのではなく「安全に加速させる」
多くの企業では、「AIが便利すぎて、ルールが追いつかない」という現象が起きています。
その結果、「禁止」にしてしまったり、社員が自己判断で使ってしまう事態に。
重要なのは、「使わせない」ではなく、「安全に使わせる」ためのルールと環境を整えることです。
「AIを使う人に責任を押し付ける」のではなく、
「会社がリスクを想定して道筋を用意する」のが現代の情報統制です。
まとめ
今回は「ChatGPTは情報漏洩が心配?企業が生成AIを安全に導入するためのガイドラインと設定ポイントを徹底解説」と題して企業の生成AIを活用についてみてきました。
今後、生成AIを使いこなすかどうかで、企業の生産性や競争力に大きな差がついていくことは確実です。
その一方で、「情報漏洩」や「ガバナンス不備」によって信頼を損ねた企業が市場から退場するリスクもあります。
だからこそ、今こそ必要なのは
ってことですね。
ガイドライン作成や導入支援はプロに相談を
生成AIの導入において、ガイドライン整備や安全なツール選定は、企業全体の信頼性や成長速度に直結する重要課題です。
弊所では以下のようなサポートを行っています
「何から始めたらいいかわからない…」という方でも、まずはお気軽にご相談ください。