三重県で産業廃棄物収集運搬業や処分業の許可申請をするとき、「車両や人員が足りているか」だけでなく、
この先もきちんと事業を続けていけるだけの“お金の土台”があるか
という点も、県から厳しくチェックされます。これが「経理的基礎」の審査です。
その際、決算書や申告書だけで足りる事業者もいれば、
- 今後5年間の事業計画書
- 収支・資金計画書
- 売上高の内訳書
といった追加書類を求められる事業者もいます。
この記事では、三重県の「経理的基礎の審査ガイドライン」をもとに、
- どんな会社・個人事業主が追加書類を出す必要があるのか
- 追加書類の中身はどんなものか
を、できるだけ専門用語をかみ砕きながら整理していきます。
三重県の「経理的基礎」審査の考え方
ガイドラインでは、経理的基礎を有すると認められる事業者像として、概ね次のように書かれています。
- 適正な処理量から妥当な収益を上げている
- 処理費用や維持管理費、設備投資の費用をまかなったうえで、中長期的に利益が見込める
- 借入がある場合でも、着実に返済していける見通しが立っている
つまり、「今なんとか黒字」というだけでなく、
数年単位で見て、無理のない資金計画のもとで事業を続けていけるか
を見ていると考えてください。
この判断の材料になるのが、
- 直前期の自己資本比率(自分のお金と借金のバランス)
- 直前3年分の当期純利益の平均値
- 直前3年分の経常利益の平均値
などの数字です。
「基本書類」と「追加書類」の違い
まず、すべての事業者が出すのが基本書類です。三重県では、次のものが基本書類として挙げられています。
- 決算書一式
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 株主資本等変動計算書
- 個別注記表
- 事業開始・継続に必要な資金の総額と資金調達方法を記載した書類(様式5)
- 法人税の確定申告書の写しと納税証明書
これらだけで「経理的基礎は十分」と判断されれば、追加書類は不要です。
一方、基本書類だけでは判断しづらい事業者については、
次の追加書類の提出が必要になります。
- 収支・資金計画書(書式1・書式2)
- 売上高内訳書(書式3)
- 必要に応じて、融資証明書や返済計画書などの裏づけ資料
これらは、
今後5年間(優良申請なら7年間)の売上・経費・借入返済の計画を、数字で示した「将来の決算書」
のようなものだと思ってください。
なお、これらの書式の代わりに、
- 中小企業診断士
- 公認会計士
などが作成した診断書を提出してもよいとされていますが、その診断書の中に、上記の内容(5年分の収支・資金計画、売上内訳)が含まれていることが条件です。
さらに、一年間の売上高の前期比伸び率が15%を超えるような急成長の場合も、三重県と協議のうえ、中小企業診断士の診断書が必要になります。
愛知県、岐阜県とはこのあたりの扱いがかなり違いますのでお気をつけください。


法人(会社)が追加書類を求められるケース
審査に使う3つの数字
三重県では、直前3年分の決算書をもとに、
- 自己資本比率(直前期)
- 当期純利益の3年平均
- 経常利益の3年平均
の組み合わせで13パターンに分け、それぞれ
- 基本書類だけで足りるケース
- 基本書類+追加書類が必要なケース
- そもそも不許可となるケース
を決めています。
ここでは、そのうち「追加書類が必要になる代表的なパターン」を、かみ砕いて見ていきます。
自己資本比率はそこそこあるが、3年平均は赤字
まずは自己資本比率が10%以上ある会社です。
一見すると健全そうですが、次のような場合は要注意です
- 自己資本比率:10%以上
- 当期純利益の3年平均:マイナス
- 経常利益の3年平均:マイナス
つまり、
財務の土台はまだ残っているが、ここ3年トータルでは赤字続き
という会社です。
この場合、基本書類に加えて、5年間の収支・資金計画書などの追加書類が必要になります。
自己資本比率が10%未満で、3年平均が赤字
次は、自己資本比率が0〜10%の会社です。
- 自己資本比率:0%以上10%未満
- 当期純利益の3年平均:マイナス
- 経常利益の3年平均:マイナス
このパターンは、
財務のクッション(自己資本)が薄い上に、3年トータルでも赤字
という状態です。
当然ながら、追加書類が必要になります。
自己資本比率が0〜10%であっても、3年平均は黒字という会社もありますが、その場合は基本書類だけで済むのが原則です。
ただし、赤字の年が特殊事情ではなく慢性的なものと判断されたときは、追加書類を求めることがあると明記されています。
債務超過だが、まだ挽回の余地があるケース
次に、もっと厳しいパターンです。
- 自己資本比率:0%未満(債務超過)
- 当期純利益・経常利益の3年平均:いずれか、または両方がプラス
債務超過とは、
会社の資産を全部売っても、借金を返しきれない状態
です。
かなり厳しい状態ですが、ここ数年の利益が黒字に戻ってきているような会社については、
- 追加書類を付けることで、経理的基礎ありと認める余地を残している
と読み取れます。
一方で、
- 自己資本比率:0%未満(債務超過)
- 当期純利益の3年平均:マイナス
- 経常利益の3年平均:マイナス
というケースは、不許可と明記されています。
追加書類で挽回する余地はなく、「経理的基礎がない」と判断されるラインです。
直前3年分の決算書を出せない会社
- 法人成りして間もない
- 会社分割や合併で、過去3年分の決算が揃わない
といった場合には、「直前3年の基本書類を提出できない法人」という扱いになり、基本書類に加えて、必ず追加書類が必要です。
個人事業主の場合の考え方
ガイドラインでは、申請者が個人の場合でも、
基本的な審査の考え方は同じで、ガイドラインの手順に準じて審査する
と書かれています。
そのうえで、個人についてのポイントとして、
- 所得税に未納がないこと
- (最終処分場の場合)維持管理積立金が積み立てられていること
が挙げられています。
個人事業主の場合も、
- 赤字が続いている
- 借金が資産を上回っている(実質的な債務超過)
- ここ数年、所得税を払っていない年が多い
といった状況であれば、法人と同様に、
- 今後5年間の事業計画書
- 収支・資金計画書
- 必要に応じて専門家の診断書
を求められると考えておいた方が安全です。
5年間の事業計画書・収支・資金計画書で見られるポイント
では、追加書類として提出する
- 事業計画書
- 収支・資金計画書
- 売上高内訳書
では、何がチェックされるのでしょうか。
ガイドラインでは、次のような点が重視されています。
赤字や債務超過の「原因」と「改善策」が筋が通っているか
まず、直前3年の決算書を振り返り、
- なぜ赤字になったのか
- なぜ債務超過になったのか
を説明したうえで、
- それをどう改善していくのか
というストーリーが、数字と矛盾しないかどうかを見ます。
売上・経費の見込みが現実的か
収支計画(売上高の内訳を含む)については、
- 直前3年の実績と比べて、急に非現実的な売上を見込んでいないか
- トラック台数や人員から見て、処理量は妥当か
- 単価が極端に安すぎないか
- 処分委託費・維持管理費など、必要な経費を見落としていないか
といった点が確認されます。
借入金の返済計画に無理がないか
資金計画では、
- 設備投資の金額・タイミングは妥当か
- 借入先・金利・返済期間などの条件は妥当か
- 既存借入の返済状況に問題がないか
などを踏まえ、着実に返済していける見通しがあるかが見られます。
必要に応じて、金融機関の融資証明書や返済計画書の提出を求めることも明記されています。
「うちは追加書類が必要?」簡単セルフチェック
ご自身の会社・事業について、次のようにチェックしてみてください。
- 営業年数・決算年数
- 法人・個人とも、直前3年分の決算書(または申告書)は揃っているか
- 揃っていない場合 → 原則として追加書類が必要
- 赤字・債務超過の有無
- 3年平均で見ると、当期純利益・経常利益は赤字か
- バランスシート上、債務超過になっていないか
- 債務超過で、かつ3年平均も赤字 → 不許可のリスクが高いゾーン
- 自己資本比率
- 直前期の自己資本比率が10%を切っていないか
- 0〜10%で、3年平均が赤字 → 追加書類が前提と考えた方がよい
- 売上の伸び方
- 直近で売上が前年比15%を超えて急増していないか
- 急成長の場合も、中小企業診断士の診断書が必要になる可能性がある
これらのどれかに引っかかるようであれば、
「三重県では追加書類が必要な側に入るかもしれない」
と想定して、早めに準備を進めておくと安心です。
なお、追加条件が必要となるケースなどは変更になることもありますので、必ず公式サイトで最新情報を確認するようにしましょう
>>三重県公式サイト
まとめ:三重県は「5年先までの数字」を重視する
三重県の経理審査は、
- 直近の決算の数字(自己資本比率・3年平均の利益)
- 債務超過の有無
に加えて、 - 今後5年間の事業計画・収支計画・資金計画
をかなり重視する仕組みになっています。
赤字や債務超過があっても、「5年以内に立て直せる現実的な計画」が示せれば、経理的基礎ありと認められる余地は残されています。
逆に言えば、
- 決算書の数字だけを見せて終わり
- 将来の計画を説明できていない
という状態では、許可審査で苦戦する可能性が高くなります。
三重県で産廃許可の申請・更新を検討している事業者の方は、
- まず自社の決算書を3年分棚卸しする
- 赤字や債務超過がある場合は、5年の事業計画・収支計画を早めに作る
- 必要に応じて、中小企業診断士や公認会計士に診断書作成を依頼する
という流れをイメージしておくと、スムーズに経理審査を乗り越えやすくなります
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